最近の傾向としてリグをUSBケーブル出PCに接続するケースが多く、ソフトでリグを制御するケースが増えてきたからですね。また、FT8の普及によりこの傾向が一段と強くなって来ています。
そんな中、従来のRF回り込みと違う現象が増え、ほとんどがUSBケーブル絡みの問題となっています。発生事象としては、リグの制御がいきなりできなくなるや、USBオーディオ信号が途切れるなどがあげられます。
コモンモードの対策が一般化している中、パッチンコアをケーブルに巻いて対応している人も多いと思いますが、同じ対応をするにも周波数などを考慮した対策が必要だと思います。
今回、見えないRFの回り込みで80mの回り込みが発生し、PCの一部の機能がストールする問題に対し、色々と行った結果大きな効果を出したので、その内容をまとめてみました。
- 安いUSBケーブルは使用しない
- コアは周波数特性のあったモノを使用する
問題の概要
ことの発端はパッチンコアの付いたUSBケーブルでも回り込みが発生した事です。パッチンコアの個数を増やしていっても劇的な改善は出ませんでした。
従来は神様のように崇められ、万能アイテムと考えられていたパッチンコアの効力が認められなかったのです。
何故か?
まず最初に考えたのは、コアの周波数特性が80mに合っていないと言う事。その辺に余っていた物や、貰い物だったりしてコアの周波数特性を把握していないで使用していた。
よくHFで使用されるFT240のフェライトコアにも43、61、77と種類があり、使用する周波数によって効果が違うんですよね。
これと同じように、全然違う周波数で効果が有る特性のコアを付けても、80mでは全く効果がないと言う事ですね。
次に思い付いたのは、USBケーブル自体が古いケーブルなのでシールド効果が無いのでは無いかと思いました。
自分が使用して問題となったケーブルは、グレー色の物で柔らかいものでした。このケーブルをパッチンコアに巻いても、効果が無かったんです。
そもそも古いUSBケーブルは、ノイズに対する対策等は実施されておらず、ノイズ等は逆にだし放題の感じがしました。
結論として、何故USBケーブル経由でRFの回り込みが発生する理由は以下の通り。
- USBケーブルのシールドが不十分
- パッチンコアの周波数特性があっていない
大きくはこの2つであると判断しました。
最終的な原因の追求
今回の発生状況では、PCの画面上では普通にJTDXが動いているように見えます。しかし、入力が無いのでウォーターフォールの表示は無く真っ黒な状態です。
そして、受信動作はしているようですが、送信ボタンをクリックしても送信できないし、バンドの切り替えもできません。
そうすると、
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- PC自体は動いているがUSBのデバイス部分がHW的におかしくなっている
- USBドライバーがストールしている
かのどちらかと推測されます。
どちらにしても、USBポートからRF信号が入りHWまたはSW的に障害を発生させていることに間違いなさそうです。
この症状が発生したときに、USBケーブルを抜き差ししましたが、変化がなかったのでSW的にストールしているような感じがしました。
いずれにしても、USBポートへのRF信号の侵入を防げば対策できると思いました。
今回の対策の実行
まず簡単にできる対策で、ノイズの放射線と外来ノイズの影響を防ぐ為にUSBケーブル自体を交換しました。そのケーブルの条件としては、最低限二重シールドになっていること。
コア付きはノイズの放射防止が主目的のようなので、有っても無くても関係ない。とにかく二重シールドであること。
二重シールドになると、若干堅くなるので直ぐに分かります。この二重シールドにするだけで、軽微な回り込みは対処できます。状況により出たりでなかったりするのですが、最低限、二重シールドのUSBケーブルに交換はしておいた方が良いですね。
次に二重シールドでもダメな場合には、更にケーブルのインピーダンスを上げるために、コアを追加します。この時に重要なのはフェライトコアにしろパッチンコアにしろ、周波数特性をよく調べて適用するということです。
例えば、自分の場合には80mでの回り込みでしたので、3〜4MHzでのインピーダンスが高く取れるものがベストだと思いますが、HF帯で全般的な効果を狙うためにFT240−43材が良いかと思い、これを使用しました。トロイダルコアの場合には、ローバンドで使用するには赤色のコアが、HF全体で使用するには黄色のコアが特性的に良いようです。
パッチンコアを使用する場合には、コアの特性がHF対でインピーダンスが大きくなるものを選んだ方が良いです。パッチンコアの場合、どちらかというとEMI対策用が多いので、インピーダンス特性が25MHzと100MHzで表記されている物が多いです。HF帯のインピーダンスは50Ω以下のものが多くVHF帯でインピーダンスが大きくなるものが一般的ですので、よく調べてから適用してください。
自分が手持ちのモノを調べて見ると、LF102でしたので、100MHz以上で240Ωという高い値になっています。しかし、HFでの使用は全く効果はなさそうですね。
自分はやはりFT240−43材にW1JR巻きでキャンセルするように4Tづつ8T巻きました。このコアをPCのUSBポートの近くに挿入するようにします。
二重シールドUSBケーブルとコアの挿入により、ほぼ回り込みは皆無になりました。以前にPCのディスクトップのアイコンが点滅したり、マウスが選択できない、キー入力ができないという不具合も、結局同じRFの回り込みだったようです。
より完璧な対策を目指して
更にトドメとして、USBのPC側とリグ側のアースを切り離すUSBアイソレータを入れてあげれば、完全にPCとリグのアース回りのループは遮断できます。しかも、アースが別々になるということから、ノイズに対する効果も期待できます。
余談ですが、USBオーディオを追求している人はUSBケーブルやUSBアイソレータ、USB電源に対してかなり神経質になっているようです。
また、SDRレシーバーの世界では、受信の入り口にガルバニックアイソレータをいれ、同じように外来ノイズを遮断することが定番的に行われております。
まとめ
回り込みはパワーに関係なく発生しますので、発生したらどのケーブルにRFが干渉しているのかを、一つ一つ確認していく必要があります。
発生したら都度対策するのが対策箇所を明確にし、費用を最小限に抑えることもできますが、リグとケーブルが繋がっているという事実から、これらの部分には最初から今回のような対策をしておけば安心ですね。
これらの対策を実施したことで、送信した瞬間に回り込みで信号が出なくなり、送受切り替えができなくなる現象は皆無になりました。